感情と無意識
https://jsre.jp/emotion/pdf/es01_1/73.pdf
IPANATを用いた感情測定
下田俊介 東洋大学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ems/1/1/1_010116/_pdf/-char/ja
IPANAT
- Implicit Positive and Negative Affect Test
- ポジネガ感情の潜在測度
- 回答者に感情の自己報告を直接的に求めるのではなく、特定の対象が表す気分の評定を求めることで、自らの感情状態を測定していることを自覚させずに、間接的に感情を測定する
- 質問紙で実施可能
- 社会的望ましさなどの意識的な歪曲をうけにくい
具体的には
- 「さまざまな気分を表すように作成された人工語」と称したニュートラルな無意味語(SAFME, VIKES,TUNBA, TALEP, BELNI, SUKOV)を提示
- それぞれの人工語がどんな気分を表してるかを6種類の感情語(happy, energetic, cheerful, helpless, tense,inhibited)を用いて、想像しながら直感的に回答してもらう
- 人工語は、実際にはニュートラルな無意味語であるため、このようなあいまいな対象を評定する場合、回答者本人の感情がその評定結果に影響を及ぼすだろう(感情を無意味綴りに転移させる、感情プライミング)という考え方
- 顕在尺度みたいに明確じゃないから、IPANATは目的をボカして使うのに向いてそう
- 顕在尺度だと要求特性、今こうしてるから、こういうの見たから今はこういう気分なんだろうと、勝手に都合よくマインドを変えてくれる、が影響しやすい
- 感情語得点を算出
- 6種類の感情語の得点算出
- ポジネガの感情得点を算出
- 信頼性と因子的妥当性
IPNATで測定したのの内訳
- 状態的感情
- 状況手がかり(個人内、環境からの刺激)によって活性化、生起した一時的な感情状態
- 特性的感情
- 特定の感情に対する慢性的なアクセスしやすさ
- 個人の経験などによって異なると想定される
- 例えば慢性的にポジティブ感情にアクセスしやすい個人は、ポジティブな感情への閾値が低く、ポジティブな感情状態になりやすい
- 誤差
- 人工語に対する主観的な連合の度合い
- 人工語はなるべくニュートラルで無意味な語が用いられている
- が人によっては特定の人工語と特定の事象とが結びつきやすいかも
単純接触効果と無意識
川上直秋 愛知淑徳大学
https://jsre.jp/emotion/pdf/es01_1/81-86.pdf
我々の好意はどこから来るのか
- すばやさ 活動性
- つよさ 力量性
単純接触効果 mere exposure effect
- 対象への反復接触が、その対象への好意を増加をもたらす現象
- ロバート・ザイアンス 1968
基礎的知見
- 文字や顔写真、図形など、あらゆる対象において生起
- 接触回数と好ましさは右肩上がりの比例関係
- 反復接触という基礎的な情報処理が、好ましさという感情と結びつく
- 接触に気づいてなくても好意は上昇、つまり自覚なしの無意識現象
単純接触効果における無意識
- 刺激の閾下提示(閾下単純接触効果)入力における無意識
- 潜在指標を用いた測定(潜在的効果)出力における無意識
単純接触効果に影響しやすそうな刺激提示の仕方
- 多様な側面に触れる
- 接触を日々積み重ねる(累積的効果)
- 異質なものと「適度に」接触する
- 行動が理解しやすい(行動の一貫性の効果)
- 誰かと話して好きだとわかる(潜在的効果の顕在化)
多様な側面に触れる
単純接触効果の般化(generalization)
実際に接触した刺激に留まらず、同じカテゴリに属する未接触刺激の好意度も上昇
- ある規則に従った人工有限文法を含む無意味文字列の学習が反復接触により行われ
- そして接触時には呈示されていないにもかかわらず、その文法に従った未接触の文字列に対しても単純接触効果が生起(Gorden & Holyoak, 1983; Smith et al., 2008)
- 接触した刺激と評価する刺激に何らかの共通性が存在するから単純接触効果が生じるのだろう
- 単に見たものを好きになるという視覚的な現象ではないのかも
- 接触した対象をどう捉え解釈するか、知覚者の主体的な認識を媒介として生起する現象なのでは
白人一般への好意的影響が確認された
- 白人の顔写真への反復接触によって、未接触の黒人顔写真に対する好意度が減少(Smith, Dijksterhuis,& Chaiken 2008)
- 単に刺激の物理的特徴に依存した現象ではなく、より高次の社会的認知プロセスを含む現象なのでは
接触を日々積み重ねる(累積的効果)
- 集中(1日で100回接触) vs 累積(5日間連続で20回/日)
- 多面(同一人物の複数の表情を提示) vs 単一(同じ表情を提示)
結果、
- 接触直後は、いずれの条件(集中/多面、集中/単一、累積/多面、累積/単一)においても単純接触効果が生起、特に集中的な接触が最も強い
- 集中接触では1ヶ月後で効果が消失
- 累積接触では、直後の効果が3ヶ月後まで持続
- 単純接触効果が長持ちしやすいのは、ちょっとずつ何度もなのかも
また、
- 単一よりも多面の方が単純接触効果が強かった
- 接触回数多い→親近性高まる→単純接触効果、とそこまで単純ではないのかも
- 単一刺激の多数回呈示よりも、複数の刺激を少数回ずつ呈示した方が効果的
単純接触効果においては、反復と変化の役割分担があるのでは
- 表情は違っても同一人物であるというカテゴリレベルでの反復に起因する親近性
- その人物の複数の刺激に接触することによるカテゴリ内での変化による新奇性
- こうした対象への多面的な接触が、単一側面への接触よりも、その対象についての立体的な理解が促進されることで効果が強化されたのではる
- 単純接触効果による無意識的な好意度形成には、対象を多面的に捉え、その対象像を明確にする認知過程が根底にあるのでは
異質なものと「適度に」接触する
- 多数の典型例に、少数の非典型例が混ざった場合に効果が最大化
- 急激な変化よりも、緩やかな変化の方が好まれる
実験
- オタク: 一般的に固有の外見的特徴を有すると認識されやすい社会的集団
- オタクとして教示された計10名の人物写真を閾下呈示
- オタクとして典型的な人物と非典型的な人物の割合を段階的に操作
- 潜在指標によって測定されたオタクに対する単純接触効果を最大化させる典型性の割合を探索
結果
- 単純接触効果が生起したのは、接触する10人のうち70%か100%がオタクの場合
- 反対に、接触するうち30%か0%がオタクの場合には単純接触効果が生じなかった
- 非典型的な成員への接触が典型的な成員に比べて多くなると単純接触効果が生じない
- 効果の強度を割合間で見てみると、70%条件で最も効果が強かった
- 多数の典型成員に少数の非典型成員が組み込まれることで、典型成員のみに接触するよりもむしろ集団カテゴリ固有の特徴が明確になり、単純接触効果が強化されたのでは
単純接触効果における有効な変化とは
- 既存の枠組みさえも曖昧となる急激な変化ではなく
- 既存の枠組みを大きく逸脱することなく異質性が一つのカテゴリの中に内包され
- カテゴリの多様性として理解され得る緩やかな変化を伴う接触なのでは
行動が理解しやすい(行動の一貫性の効果)
- 閾下での系列提示からストーリーを無意識に知覚しているっぽい
- 変化の中から、時間的、空間的な連続性を抽出してるのでは
- 単純接触効果が生じたのは系列提示のみ
- ランダム提示は単純接触効果を抑制
実験
- 女性のある行動(ジュースをこぼして拭く)の映像を10枚のスチール画像に分割したうえで、それらが行動の順番通り(系列呈示)にまたはランダムに10回ずつ閾下呈示
- 画像に登場していた女性への潜在的好意度を測定
結果
- 系列呈示した場合のみに単純接触効果が生じてた
- その人物の顔写真のみを反復呈示するよりも潜在的好意度は高かった
誰かと話して好きだとわかる(潜在的効果の顕在化)
- 潜在指標のみで単純接触効果が生起
- 閾下での単純接触は、潜在的次元に強く影響を及ぼす
同じ刺激に接触した者同士が相互作用をおこなった場合のみ、顕在指標でも単純接触効果が生起
情動反応が学習過程に与える影響とその特徴
渡邊言也
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ems/1/1/1_010118/_pdf/-char/ja
- 我々は自分自身を常に環境に適応させながら、目的を達成(自身が得られる利得を最大化)するために学習している
- 学習の中でも特に試行錯誤によって習得される学習がどのようなルールによって実現されているか
- 条件づけ学習には条件刺激、行動、無条件刺激のみが不可欠な要素
- 条件付け学習(Conditioning): 特定の刺激と行動、あるいは結果を関連付けることで、新しい行動や反応を学習する心理学的なプロセス
- だが現実環境は大量の情報が溢れている
- 本来の目的とは無関係だが情動に影響を与えて、学習の出来や習得スピードを変化させてしまう情報もある
- 学校におけるクラスの雰囲気や職場の緊張感のある空気など
- 課題に無関係な情動喚起が、条件づけ学習に影響するか?
結果
- 恐怖表情刺激は、中立表情刺激提示に比べて、学習スピードを加速させた
- この加速は学習率上昇によって実現されている
考察
- 環境から喚起される情動は常にその場において意識できるものとは限らない
- 情動が学習率を向上させる現象も日々の生活の中で無意識におこなっているだろう
二過程モデル two pathway model for emotional signal
視覚情報が網膜で処理されてから情動の中枢と考えられている扁桃体へ入力されるまでに大きく分けて二種類の処理特徴の異なる脳内経路が存在し、それぞれの処理特徴が異なるとするモデル
- 皮質経路 cortical pathway
- 一般的な視覚情動処理過程(網膜 視床外側膝状体 一次視覚野 第二次視覚野 高次の視覚野、扁桃体)
- 時間をかけて細かい情報を処理する、ことで適切な行動をおこなうのだろう
- 皮質下経路 subcortical pathway
- 少ない神経核を介して(網膜 上丘 視床枕 扁桃体)
- 素早くアバウトに判断する
- 何を見たかという知覚がなくても扁桃体は情動に関する処理をおこなっている
日本感情心理学会 https://jsre.jp/
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