和田信明 中田豊一
国際援助においては、現地の人々の合意を得ながら開発プログラムが進む。だが後で振り返ってみると、プログラム内容が最適な解決策になっていなかったり、一過性に終わっている場合もある。その原因の一つに、援助する側とされる側の認識のズレが挙げられる。
例えば「この村では何が問題で困ってますか?」「水汲みが大変です」「井戸はないんですか?」「自分たちでは作れません」「では作るのを手伝いましょう」井戸が作られたおかげで水汲みに遠出しなくて済むようになりました、めでたしめでたし。
ところが数年後に村を訪れると井戸が使われていない。井戸のレバーが壊れたらしい。住民は以前のように水汲みをしている。井戸の修理方法がわからないし、水汲みはもともとやっていたし、そこまで不便とも思っていないらしい。井戸作成プログラムは一定の役には立った。だがさして困っていない様子を見ると、井戸はあれば便利かなぐらいの要望であって、真に解決すべき重大な問題が他にあったのかもしれない。
認識のズレをなくすにはどうすればよいのか?そのカギは相手への質問の仕方にあった。NGOとして途上国に赴いた著者達が、現地の住民やスタッフとの会話で実践しながら編み出したコミュニケーション方法を体系化。実際の出来事を紹介しながら具体的な手順、注意点について解説している。
ポイント
- 認識のズレをなくすには「事実」をたずねる
- 「いつ」「どこで」「誰が」「何が」のように事実を答えやすい投げかけをする
- 「なぜ」「どうして」と尋ねてしまうと、事実ではなく「感情」や「解釈」を答えてしまう
- 「事実」「感情」「解釈」を切り分けることで、俯瞰で状況把握するメタ認知が醸成される
- 自分たちを客観的に捉えることができると、課題の整理がしやすい
詳細(引用含む)
想起しやすい事実を口にしながら過去の出来事を整理してもらうことで、相手の記憶の棚卸を手伝う。
「その問題が最初に起こったのはいつ?」「最近その問題が発生したのはどこで?」
「その問題で誰が困っている?」「その問題に対してこれまでに対処したことは何?」
事実を重ねる対話を続けることで、相手は気づきを得やすくなる。
「なぜ」「どうして」は相手の負担が大きい、詰問されてるようにも感じる。回答が難しい。
空気を読んで、質問者が欲しがっている答えを口にしてしまう。質問する側も自分の思い込みで質問してしまう。
そうすると事実から遠ざかる。対話の焦点が揃わない。問題が的確に定義されない。解決方法も的外れになる。
事実をたずねることで、本当に解決したい問題の定義、そして的確な答えへとつながる。
結論と展望
書籍タイトルからは遠い途上国の話に見える。だがその応用範囲は広い。日常のあらゆるコミュニケーションに通じる。ビジネスにおけるファシリテーション、問題解決にも使える。
答えを急がない。問題を取り違えない。相手と違う景色を見ない。なぜをたずねるよりも「事実」を着々と積み重ねる。
地味に見えるこの対話術は、途上国に限らずあらゆる場面で有効に機能する。
関連書籍
同著者の手により、実社会において適用しやすいようにエッセンスを抽出した後続書籍あり。おそらくこちらの方が入手しやすく、かつ読みやすいと思われる。
「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた 「なぜ」と聞かない質問術 中田 豊一
照井伸彦
タイトル通り、ベイズ統計モデリングの手法をマーケティング場面に活用することを目指した本
難解な点は、
- ベイズやモデリングに明るい人には、マーケティングの説明が薄い
- マーケティングに明るい人には、ベイズやモデリングの説明が薄い
- 両方明るい人にはちょうどいいが、そんな人はそうそういない
違う表現をすると、
- 数式がバンバン出てくるので苦手意識がある人には向いてない
- プログラミングのコードは出てこないので写経したい人には向いてない
消費者行動場面を、ベイズ的観点からモデリングしてみる際の手順をちょっと知ってみたい人にはおすすめ
書かれてることを自分の中で咀嚼して応用が効かせられる人にもおすすめ
木戸 茂
マーケティングをデータに基づいて科学的に意思決定する際の手法や応用手順を体系的に紹介するシリーズ書籍。
テレビや紙の媒体でかつて実際におこなわれてきた、以下のような統計的、計量的手法によるモデル構築と検証結果を説明
- 広告予算配分の最適化
- 各媒体のリーチ推定モデル
- 広告認知率の推定モデル
- 広告効果の因果モデル
- ブランド連想と広告評価の因果モデル
広告の短期的効果と長期的成果を区別したり、企業ブランドと製品ブランドを区別するなど、シンプルなモデルを目指してるのは好感持てる。広告の継続出稿有意義性を後押しする材料にも使いやすそう
GRPのような広告につきものの説明変数だけでなく、同一市場内での競合との広告シェア、自社の値引率、自社の相対的なシェア、平均購入個数、継続購入率、市場自体の成長率、市場が寡占的か激戦区かなども変数として採用しており、広告出稿に閉じた話に終わらず、ソリューション全体の提案として使いやすい
プリファレンスという1つの説明変数で購買予測するUSJ森岡モデルに比べて、本書はプリファレンスに集約してしまう前の段階、すなわちブランド・エクイティの説明変数が具体的でわかりやすい
またマーケティング全般というよりは広告業界視点で語られている点は、広告業界関係者にはとっつきやすく感じられるだろう
数学的方面からのアプローチや、サイエンス方面からの理解を深めたい人にはおすすめ
統計スポットライト・シリーズ
内容
野外の生き物を観察して得たデータを分析しながら統計手法を学ぶ本。
-クマさんにGPSをつけて計測した移動軌跡をクラスター解析でデータ集約して生態環境を研究
- 樹木の年輪幅から成長量を推定する状態空間モデルを作成、ベイズで推定、平滑化して森林の長期動態を研究
- スズランの果実が実る割合を目的変数に、花粉散布をロジスティック式でモデル化、対数尤度やAICでモデル検討、
- ランダムウォークモデルを作成してシミュレーション
といった事例を紹介しながら、データの計測の仕方、記録方法、データ集約手順や解析を説明。
ここはよかった
自然観察から得られる複雑な事象を数値化、図示化するのはなかなか手間に思えますが、そういうのができるソフトの紹介やデータ加工手順については参考になりそう。
ここはちょっと
具体的なコードなどの記載まではなく、さらっと概要を紹介した薄い本なので、そういうのが欲しい場合は緑本の方が向いてそう。
統計スポットライト・シリーズ
内容
ポアソン分布の理解を深めることを目的にした本。
- 式だけ見ても直感的に理解しにくい。二項分布ならまだしも、ごく稀に発生する事象の分布と言われても想像しにくい。
- ならばエクセルでシミュレーションしてポアソン分布を作りながら不安感を解消しよう。
- その延長で最尤法,AIC,非定常ポアソン過程を学びましょう。
ここはよかった
へーエクセルでそういうこともできるんだ
ここはちょっと
上の野外調査ともども、緑本と内容がカブってる。緑本は実践に重きを置いてるので原理や理由の詳細説明はあまりない。それを補えると捉えればこの2冊は有用なんだが、副読本の立ち位置でよさそう。
内容
シミュレーションで社会問題を解決しよう、その取り組みや事例を提示、入門となる本。
- 現代は学問・研究領域の専門化、細分化が進んでおり、研究分野が違うと共通言語が乏しくて相互理解が大変。
- 一方で、世の中の事象は様々な要因が絡んで複雑化しており、単一領域の学問・技術だけでは解決が難しい。
- そこでシミュレーションが共通言語となり、社会を解明する、課題解決の役割を担うと期待されている。
共有地の悲劇がもたらす環境問題、エージェント・ベース・モデリング、データ分析でシミュレーション、デマツイートとウィルス感染、都市形成、居住民族の構成変化、三次元物体の透視可視化などを紹介しながら、シミュレーションの楽しさや難しさを語る。
ここはよかった
いろんなテーマをちょっとずつ紹介してあり、また実生活とも関わり合いの多い事象を取り上げてるので、読みやすかった。
ここはちょっと
興味を持ってもらうための導入とわりきってもともと作ってあるため、詳しくは参考文献見て自助努力でと放り出される。
放送大学のソーシャルシティ('17)講座は続きとしてよいかも。
http://www.ouj.ac.jp/hp/kamoku/H30/kyouyou/C/seikatu/1519077.html
放送大学のははシミュレーション関係ない。都市問題つながり。福岡の繁華街、天神に新しい商業施設がオープン、駐車場は足りるの?大分市の駅高架化で、駅ビルがきれいになったら商店街との人の行き来はどう変わった?梅田とか落合氏とかきゅんくんなども登場。
内容
臨床試験での実験計画において従来使われてきた頻度流統計の利点と欠点を述べつつ、それを補う形でベイズ流を説明する本。
ここはよかった
頻度流との対比でベイズ流を説明してるので違いやそれぞれのよさがわかりやすい
ここはちょっと
残念ポイントは特に見当たらない。じゃあNPSが高いかというとそういう気もしない。なんでだろう、これ一冊では完結しないからだろうか。うまく転用することで有効活用できそうな気はする(ちゃんと咀嚼できてない)