2011年12月4日日曜日

ジンクピリチオン効果

「ジンクピリチオン配合」
虚心に、この言葉だけに耳を傾けなければならない。そしてそうすれば、あなたは必ず思うはずなのである。なんだか、すごそうだ。(中略)
ジンクピリチオン。この言葉から想起されることはまず第一に、何だそれ、ということである。次に、ややこしい名前だなあ、と思う。そしてついには、こんな舌をかみそうなものの名をあえて言うのだからきっとそれはすごいものなんだろう、と思うわけである。まさしく、あなたの判断は正しいわけである。それが何であるかということはわからないし、わからなくてもいい。しかし、そんなへんてこなものの名をどうしても言わなければならなかったその理由は、それがすごいものだからなのである。もう、これが配合してあると聞いてしまった以上、人は、よいものだ、と思うしかないのである。
ジンクピリチオン配合。そう聞いたら、へへーっと平身低頭して尊敬してしまうほかはない。(清水義範「インパクトの瞬間」:「永遠のジャック&ベティ」講談社文庫所蔵)


グライスの会話の公準:社会言語学者グライスが見いだした会話成立のための暗黙の前提のこと。以下の4点からなる。
(1)量の公準:必要な量の情報を与え、必要以上の情報を与えないこと
(2)質の公準:真実だけを話し、間違いや根拠の不十分なことを言わないこと
(3)関連性の公準:会話の目的に関連することだけを言うこと
(4)語法の公準:明瞭に話し、あいまいで冗漫な語法を避けること

一般意味論:言葉の正しい使用のために言葉の意味について論じた啓蒙運動
参考図書:ハヤカワ「思考と行動における言語」(原著第4版)大久保忠利訳 岩波書店¥2,000


【教訓】
暗黙の前提を悪用した表現に注意する。
地図は現地ではない。言葉は現実ではない。
私たちは、人づての情報に対して、十分に懐疑的であるべきである。

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