2011年11月29日火曜日

あなたの運転マナーは平均以上?

大学教授の94%が、自分は同僚よりも有能であると考えている。大学教授とは有能な人ばかりの集まりなのか?

レイク・ウォービゴン効果:人間は、自分自身について過大評価しがちである。

基準の曖昧さ:物事を判断する基準は、1つだけではない。そこであらかじめ基準を1つに決めておかないと、正しい判断ができなくなる。

原因帰属:ある出来事の起こった原因についての認知。

原因帰属の4要素  個人外要因   個人内要因
コントロール可能  課題の困難さ  努力
コントロール不可能 運       能力

人は誰しも自分が重視する特質において、自分を高く評価する。注意深いドライバーは注意深さを重視し、運転技術に長けたドライバーは技術を重視する。そのどちらでもないドライバーは少なくとも自分は礼儀正しいと考え、マナーを重視する。
その結果、どのドライバーも自分は平均以上のよいドライバーであると評価することになる。
同じようにして、どの子どもにとっても、自分が飼っている犬が近所で一番いい犬であるということになるのである。(トーマス・シェリング)


【教訓】
「人間は自分自身について過大評価しがちである」ことを常に考慮する必要がある。
定義づけが曖昧な特性ほど、レイク・ウォービゴン効果が起こりやすい。
他人は外的要因を、自分は内的要因を重視しがちである。

2011年11月28日月曜日

風呂に入ると電話がかかってくる?

入浴中に限って電話がかかってくる。これは気のせい?それとも?

入浴中に電話がかかってこないケースとどちらが多いか。また、入浴していない時に電話がかかってくるケース、かかってこないケースと比較した場合は?

一面性の出来事と二面性の出来事:「電話がかかってくるかこないか」と「試合に勝つか負けるか」、後者のような二面性の出来事はどちらもニュースになりうる。

結果の非対称性:二面性の出来事であっても、結果に大きな違いがあれば、一面のみが注目されることになる。

マーフィーの法則:誤信を誤信とせず、むしろ目に見えない悪魔のいたずらと考えて、それに対する心構えを法則としてまとめたもの。


【教訓】
一面性の出来事は、「起こらなかったこと」に気づきにくい。
「起こらなかったことがある」ことに注意する。

2011年11月27日日曜日

ビタミンCを飲むと風邪をひかない?

ノーベル賞を2度も受賞(化学賞と平和賞)しているポーリング博士の主張

期待・先入観:物事を常識的に判断すること。「公文式と東大合格との関係はもっともだが、ゲームと東大合格との関係はこじつけだ」と考えたとしたら、それが先入観。

基準の曖昧さ:物事を判断する基準は、1つだけではない。あらかじめ基準を1つに決めておかないと、正しい判断ができなくなる。

鼻風邪は風邪?軽い頭痛は?下痢は?関節痛は?
風邪の症状の緩和はビタミンCの効果?風邪をひく回数の減少はビタミンCの効果?

物事を期待や先入観なしで見ることはできない。
期待や先入観を持つことは、人間の認知の利点。
(コンピュータにはこれができないから、バカだと言われる)


【教訓】
物事の良し悪しを決める基準はたくさんある。基準は厳密に決める。
判断基準はあらかじめ決めておく。基準を変えた場合はデータを取り直す。

2011年11月24日木曜日

東大目指すなら公文式?

ヤン坊は、公文式をやっていたら東大に合格した。うちの子も公文式をやらせたほうがよい?

(1)「公文式をやると東大に合格できる」という仮説を検証

2×2分割表  合格  不合格
公文式やる  ヤン坊 10万人 
やらない   ?人  90万人


(2)ヤン坊は、試験前にゲームやり放題だった
ゲームやり放題だったから、東大に合格したのかもしれない。
公文式をやって試験前にゲームもやったから、東大に合格したのかもしれない。
ヤン坊は実は土曜日の補習をサボって遊んでいた。土曜日にサボると東大に合格できるのかもしれない。
あるいは、公文式をやって、試験前にゲームをやって、土曜日にサボると東大に合格できるのかもしれない。
これを、上のような分割表にまとめることができる?

2×2分割表:関連する2つの事柄を、「田」型の表にまとめたもの。2つの事柄の真の関連性を調べるのに有効。

合致情報の過大評価:仮説に合致する情報だけが目につきやすく、記憶にも残りやすい。また思い出されやすい。

統制(対照)群:ある仮説が正しいことを検証するために、比較のために調べる調査対象。
欠損データ:仮説を正しく検証するには、データが足らないことが多い。


【教訓】
不完全で偏りのあるデータの誤解釈に気をつける。
2×2分割表を作ってみる。表の他の3つの部分はどうなっているんだろう?と考えてみる。
そうでない場合はどうなるかについて考えるクセをつける(否定語に注意を向ける)。
得られなかったデータがあることを忘れない。目につきにくい情報をしっかりと掘り起こしておく。

2011年11月23日水曜日

人間の直観はアテになる?

事前確率と事後確率

(1)3枚カード問題
「イベント発生前と後で確率が変化する事例」
表も裏も赤のカード(赤/赤)と、表も裏も白のカード(白/白)と、表と裏が赤と白のカード(赤/白)の3枚のカードがある。
この3枚の中から1枚を引き出してみたら「赤」だった。
このカードの裏も赤である確率は?

回答例:このカードは「赤/赤」か「赤/白」のどちらかだから、確率は1/2!

正解:裏も赤である確率は2/3。
1枚引いて赤だと判明した時点での確率を考える。引く前の確率で考えない。


(2)タクシー問題
「目撃者の証言はどれほどアテになるか?」
ある街でタクシーによるひき逃げ事故があった。その町には2つのタクシー会社があり、それぞれ緑色のタクシーと青色のタクシーを運行させている。
その町で走るタクシーの85%は緑色タクシーであり、15%は青色タクシーである。
事故の目撃者は、「ひき逃げしたのは青色タクシーだった」と証言した。
その時間帯のその場所でその目撃者の識別力を調べたところ、緑色タクシーと青色タクシーのそれぞれに対し、常にその80%は正しく識別できることが明らかであった。
さて、事故を起こしたタクシーが証言通り本当に青色タクシーであった確率はどのくらい?


(3)3囚人問題
「東大生でも50人に1人しか解けない問題」
「3囚人問題」と呼ばれる事後確率の計算問題がある。
これは、人間の直観的判断が誤答を導くような例としてLindley(1971)が紹介した問題を、市川・下條(1986)が一部改変したもので、事後確率の変更により、数学的規範解と人間の直観的判断との食い違いがいっそう顕著なものとなっている。

いま3人の死刑囚A、B、Cがそれぞれ独房につながれている。ある日そのうちの1人だけが恩赦で助かるが、あとの2人は明朝死刑になると伝えられた。恩赦になる確率はA、Bがそれぞれ1/4であり、Cだけは1/2だというのである。
Aは看守に尋ねた。「死刑になる囚人は2人いるわけだから、BかCのうちの1人を自分にこっそり明かしてくれても私には関係ないはずだからいいではないか」
看守はAの言い分ももっともだと納得し、しばらくして「Bは死ぬ」と言った。
さて、Aの助かる確率は看守の言葉を聞いた後どうなっただろうか?


【教訓】
人間の直観的な確率判断は誤りやすい。
確率は直観に反することが多いので気をつけよう。

人間は論理的な動物である?

4枚カード問題(正事例を探そうとする誤り)

「母音の裏には偶数が書かれていなければならない」というルールが守られているかどうかを調べるには、次の4枚のカードのうち、どの2枚をひっくり返せばよいか?

A B 6 7


【教訓】
「逆」は必ずしも「真」ではない。
具体的な事例で考える。

2011年11月16日水曜日

英才教育は効果あり?

ゴルフの中島常幸は、小さい頃からゴルフの英才教育を受けたのでトッププロになった。
英才教育がおこなわれていた旧京都師範付属小学校第二教室の卒業生には川喜田二郎、伊丹十三など優秀な人が多い。

ポストホック分析:分析のやり方をデータを見てから決めること

無作為抽出:統計的な分析のために使うデータ(サンプル=標本)を偏りのないように選ぶこと

英才教育:特殊な才能を伸ばすために、選抜された子ども達に、特別な教育をおこなうこと。多くの場合早期からなされることが多い。

数々の探検で死ななかった有名な探検家は、「簡単には死なない能力」を持っている?
それとも、たくさんの探検をしてもたまたま死ななかったから有名になった?
(初めの探検で死んでしまった有名な探検家とは?)


【教訓】
後付けでならば、どんな説明も可能。
標本抽出の歪みを、処置の効果と取り違えない。

2011年11月15日火曜日

強打者は足が遅い?

打力も走力も基本的には筋力であり、正の相関がありそうなのに、なぜ負の相関になるの?

同じく、入学試験も入学後の成績も同じような試験で測られているのに、なぜ入学試験の成績と入学後の成績が相関しないの?

相関関係:2つの事柄の間に関連があること

因果関係:2つの事柄の一方がもう一方の原因であること

偏相関係数:2つの事柄の関連の程度が、それぞれに相関する第三の事柄に影響を受けている時、その第三の事柄の影響を取り除いた場合の相関係数

(1)打力と走力が負の相関関係を持つわけ
<事実>打力と走力とは正の相関がある
しかし、プロ野球界で活躍している選手だけを考えると、打力+走力=一定以上、というような条件が働くため、標本に偏りができる

(2)入試成績と入学後の成績が相関しないわけ
<事実>入試成績と入学後の成績には相関がある
しかし、合格者だけを調査対象にしてしまうと、標本に偏りができる


【教訓】
相関関係を調べる時は、標本(データ)に偏りがないかに注意。
相関関係は因果関係ではない
(薬を飲んで病気が治っても、薬のせいで治ったとは限らない)。
第三の要因があることを忘れずに。

2011年11月14日月曜日

悪い子には叱った方が効果的?

登校時間が遅い子は、叱ることで登校時間が早くなる?
それとも叱ることや褒めることと、登校時間の遅い早いは無関係?

サイコロを振って、大きい目を出すことを目標とし、出た目が小さいと叱る、大きいと褒める、と置き換えてみる。

すると、サイコロの出目と賞罰(褒める叱る)が無関係なことに気づきやすい。
気力でサイコロを動かすことはできないことがわかりやすいから。

人間だってこれと同じ場合もある。
あなたが褒めようが叱ろうが、子どもの登校時間は早くも遅くもならないかも。
賞罰と登校時間には何の関係もないかもしれない。


【教訓】
叱ることの見かけの効果に惑わされない(何事にも回帰的部分がある)。
回帰のために起きた変動を、はたらきかけの結果と考える過ちに気をつける。

2011年11月11日金曜日

2年目のジンクス

プロ野球では、新人王をとった選手の翌年の成績は悪くなる、と信じられている。
また、Sports Illustratedの表紙を飾ると、(短期的に)成績を落とす、とも言われているが果たして?

回帰:2つの関連する事柄の一方からもう一方を予測する時、その予測値は平均に近いものとなる傾向があること。

1年目の成績が平均よりも飛び抜けて高いと、2年目の成績は下がる(平均に近づく)場合の方が多い。

ただし、必ず回帰するわけではない。前年の成績を維持、向上できる選手がいることもまた事実。とはいえ絶対数は少ないことから、ジンクスが生まれる。


【教訓】
極端な値のその後の予測は、(平均に近づくことが多いから)控えめにすべき。
統計的な回帰現象が起こりやすいかどうかを理解しておくべき。

2011年11月5日土曜日

ホットハンド現象

NBAでは、シュートが決まり出すとどんどん続けて決まると信じられている。いわゆるホットハンド(波に乗る)。これは本当だろうか?

連続するシュート間の相関を調べたところ相関は低い。シュートの成功または失敗が連続しているとは考えにくい。

シュートが決まる確率は、成功/失敗の二択なので、各回、常に、1/2。
前のシュートが決まったからといって、次のシュートの成功確率が高まるわけではない。


【教訓】
人間はどんなデータに対しても、ある種の規則性を見つけだしがちである。
人間はすでに持っている仮説や信念で、どんな結果でも説明づけてしまう能力を持っている。
サイコロの目は予測できない。ランダムな現象の予測はできない。
科学的な正しい判断のためには、統計的な検定が必要である。