認知心理学のフロンティア -こころの常識と偏見を越えて-
https://cogpsy.jp/event/symposium2014.pdf
犯罪捜査の認知心理学 -認知心理学を使って犯人を見破る-
越智啓太(法政大学文学部心理学科)
認知心理学: 人間の記憶や思考、言語などの認知プロセスを科学的に解明する
認知心理学を犯罪捜査に最初に用いたのはカール・グフタス・ユング。言語連想検査を使えばイケると思ったらしい
反応語と反応時間で判定する方法の弱点は、被検者効果が出やすい(江戸川乱歩 心理試験)。一般用語を使用することである程度は回避できそう。
反応語と反応時間で判定するだけではちょっと心もとない。犯罪の容疑者になってしまったらだれでも、犯罪に関連する用語には動揺してしまって反応が変わってしまう可能性があるため。
リッケン
- CIT(GKT)を開発
- CIT: Concealed Information Test 隠蔽情報検査
- GKT: Guilty Knowledge Test 罪証隠蔽法(かつての呼び名)
- 犯人しか知り得ない情報(裁決項目)と、無実の人でも知っている情報(非裁決項目)を並べて質問し、真犯人だけが示す特定の生理反応(心拍数低下、皮膚電気反応の増大など)を検出
ポリグラフ検査
- 脈拍などを計測する
カラダに出る再認テスト
- 情動が高まると吸えなくなる(呼吸が)
- 顔面サーモグラフィによるウソ発見
- ドキドキすると毛細血管が収縮する
- 顔にいっぱい毛細血管がある
- 血が通らなくなる→温度にあらわれる
- 瞳孔サイズを用いるのもある
- 呼吸器検査なんかはちょっとぐらい動いても大丈夫
- fMRI
- うるさい
- でかい
- 高い
- 20分じっとしてないといけない
- 犯罪捜査には使いにくい
- NIRS
- 4000万円
- 脳の表面付近の血流だけが計測可能
- 再認くらいはいけるかも?
犯人=犯行の記憶を持っている人。だから認知心理が使える
防災の認知心理学
邑本俊亮 むらもととしあき(東北大学)
災害時の認知バイアス
- 正常性バイアス
- これくらいは普通だ。多少の異常を異常とは感じない心理
- 物事をふだんの範囲内で理解したい
- 楽観主義バイアス(比較楽観主義バイアス)
- 自分だけは大丈夫
- 他者は被害にあっても自分には被害は及ばないだろうと思う心理
- 他人よりも自分の方が運がよい、と思いたい
- 利用可能性ヒューリスティック
- 前回大丈夫だったから今回も大丈夫だろうと思う心理
- 記憶の中で思い出しやすい情報に影響される
- 集団同調性バイアス(多数派同調性バイアス)
- 他者と同じ行動をとりたくなる心理
- みんなと一緒に。他人に同調していれば安心
- ハードウェアバイアス
- ~があるから大丈夫(地震発生時に海岸にいても、防潮堤があるから〜)
- 自分以外のモノに頼りきってしまう
ふだんは心理的安定に役立っている。しかしいざというときには逆効果
今後のためにできること
- 災害を知る
- 人間の認知心理の特徴を知る
- いろんな認知バイアスがあることを知ってると、災害の際に陥りがちな楽観的な気持ちを振り払って、適切な判断、迅速な行動をおこないやすい
- 緊急時の認知特性を知ってると、あわてず落ち着いた判断や行動がしやすい
- 災害を生き抜くための力をつける
- 防災訓練・避難訓練を何度もしておく
- 震災を忘れない
人間の認知心理の特徴について
二重過程理論
- 直感的思考(システム1)
- 無意識的、すばやい、直感的
- 熟慮的思考(システム2)
- 意識的、遅い、熟慮的、論理的
- 緊急時には熟慮的思考は働きにくい
談話理解における既有知識の役割
太郎のレストランの話
- 太郎はレストランに入った。
- ステーキを注文した。
- 太郎は満足して店を出た。
食べた、お金を払ったという記述はなくとも、そうしたんだろうと文脈から勝手に解釈している。
発達プロセスの認知脳科学的解明」
乾敏郎(京都大学大学院情報学研究科)
円滑なコミュニケーションをするには、以下3つのシステムがうまく働くことが必要なのでは。
- like-meシステム
- 他者と自己が共通の知識を持つことによって、他者の動作や意図を理解する
- mirror neuron system(MNS) 他者の動作を見てるだけで活性化する運動ニューロン
- 他者の動作を認識、理解するときに、自分の体に置き換えて理解する。
- つまり自己と他者が共鳴する
- 脳波やfMRIで実証
- 共鳴はするが動きの模倣はしない(模倣行動を抑制する機能が他に働いている)
- 他者の外面的な動作を理解する機能 1.different-from-meシステム
- 他者のこころを読む
- 他者の視点で物事を考えたり、他者の外見的には見えない心の内を推測したりする
- 他者の内面的なこころの状態を推定する機能
- 2つのシステムは相互作用しながらコミュニケーションしている
- 予測と自己モニタリングシステム
- どんな行為を行うときも、その結果を予測している
- 予測通りに運動してることを確認→主体的に行動してることを実感
- あらゆるレベルで働く普遍的な機構
- これにより自己主体感や自己所有感さらには自己存在感などが生まれる
自閉症の脳内メカニズムと病因論
- マグノセル (Magnocellular M細胞)
- 細胞体が大きい。速い
- 動き、深度、明るさの急激な変化など、映像の「動的な情報」を高速に伝達する
- すぐに高次中枢までいって低次中枢でパルボセルと出会う
- パルボセル (Parvocellular P細胞)
- 細胞体が小さい。遅い
- 色、形、詳細な模様など、映像の「静的な情報」や鮮明な情報を伝達する。
自閉症の人はマグノセルの組織化がうまくいってないから、絵のように物事を捉えてるから、隠し絵とか余裕。レインマンとかふつう
small world network
- 脳は近いところ同士でたくさんつながってる
- 長いところ同士でつながってるのもあって、これが役立つ
自閉症はlocal networkが多すぎる。強すぎる、過敏なぶん、コミュニケーションがうまくいかない
たいが。妊娠3週まで。神経かんのときの異常がいろんなところに影響してるのでは?自閉症スペクトラム
オキシトシン3ヶ月くらい投与で(自閉症の一部の機能が)改善した、という報告が最近あったらしい。平滑筋を収縮させる。子宮筋
GABAスイッチング 胎児興奮 大人抑制
「お客様」の心をつかむ商品開発
熊田孝恒(京都大学大学院 情報学研究科)
製品やサービスを利用しているときのお客様のこころを知る。これに認知心理学が役立つ、だろう
お客様は本当にニーズを知っているのか?
ニスベットとウィルソンの研究
- 4つのストッキングから品質がよいものを1つ選んでもらう
- なぜそれを選んだのか理由を聞く
- 実際は全部同じ製品
結果
- 右端選択率は左端の4倍
- しかし理由で場所と答える人はいなかった
- 編み方が〜薄さが〜と答える
つまり、
- 自分の行動や決定に関わる認知過程のはたらきを意識できない
- 人は理由を問われるともっともらしい回答をする
お客様がニーズを十分に把握しているとは考えにくいがさて?
心の中で起きていることを科学的に解明することに、認知心理学は貢献できる、だろう
認知機能
- 年齢とともに平均は低下し、同時に個人差は大きくなる
- すべての認知機能がいっせいに低下するわけではない、いろんなパターンがいる
- なので年齢カットではなく、パターン別にみる必要あり
駅での行動をもとに、「わかりにくい」を改善しないといけない (注意機能低下、作業記憶低下、プランニング機能低下)
- 注意機能低下群
- 直接目標物を探す
- 案内サインからは情報を取得しない、
- 過去の経験や駅の一般的な構造に関する知識を利用する
- 作業記憶低下群
- 頻繁に情報を取得、確認はするものの、
- 同時並行に情報を得ることは難しい(そもそも見てない)
- プランニング機能低下群
- 案内板を見ることもあるが目的が不明確
- 具体的な情報を得られないことが多い(見てるけど活用できてない)
他者のこころの認知と集団規範の生成~『暗黙のルール』はいかにして生まれるか~
村本由紀子(東京大学)
多元的無知
- 集団の多くの成員が、自らは集団規範を受け入れていないにもかかわらず、
- 他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状況
アンデルセン『はだかの王様』
- 王様は裸と誰も口にしない暗黙の規範は多元的無知から生じる
- 市民はお互いに他者の行動を手がかりにして自分の行動を決定している
- 自分には王様の衣装は見えないけど、他の人には見えてるのかも
- じゃあ自分も黙っておこうと考える
- 他者を見て決定したはずの行動が、翻って他者の意思決定の手がかりにもなってる
多元的無知による規範の維持過程
- 集団内の人々が一定の心理・行動傾向を示すとき、
- その規定因となるのは、個々人に内面化された価値や信念ではなく、
- むしろ、それらの価値や信念が周囲の他者に共有されている
日本全国に多店舗展開する企業の協力の下で行った研究事例
- リーダー(店長)とメンバーの間でお互いに対する認識のズレが大きい組 織は問題を抱えがち
- 店長がメンバーの職務意欲を実際以上に低く捉えていると、その誤解から生まれる悪循環によって、やがて本当にメンバーの意欲が削がれてしまう
個人の信念よりも「周囲が自分の信念を受け入れてくれると思えるかどうか」の方が、その人の行動を強く規定する傾向
- 研修を受けて考え方が変わった人も、自分の変化を周囲が受け入れてくれないと思うと、なかなか新たなアクションを起こせない
- 個人がどう考えているかの平均値(=実際の皆の考え)と、周囲がどう考えていると思うか(=推測された皆の考え)の平均値にズレがある
- 研修を実施する際は、同時に組織環境を整え、コミュニケーションを密にしてズレの低減を図ることが肝要
硬直化した規範の解消に向けて
すべての集団成員が意思決定に際して同程度に他者の影響を受けるとは限らない
Granovetter(1978)が提唱した集合行動の閾値モデル
- 各個人はある選択肢を採用するか否かについて特有の閾値をもっている
- 全体の採用率がこの閾値以上になった場合に、自分もその選択肢を採用する
- 自分以外に誰ひとり採用者がいなくてもわが道を行くという閾値の低い個人もいれば、
- 過半数が採用して初めて自分も動くという閾値の高い個人もいる
- 閾値の低い個人が大勢いる集団では、行動の連鎖に基づく規範変革が起こりやすい
- たまたま数名が同時にアクションを起こしている状態を作り出せば、それにならって一気に大勢が動く可能性もある
硬直化した古い規範を変革していこうとする場合、集団全体(マクロ)と個(マイクロ)の相互連関のありようをいかに見定めるかで、結果が大きく変わる可能性がある
(2014年10月メモ)
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