出社が楽しい経済学
吉本 佳生
サンクコスト
sunk cost 埋没費用
- すでに投資してしまい回収できない費用
- サンクコストに縛られて合理的な判断がしにくくなる
- さらなる損失を招くこともある
回収できないコストは忘れる。食べ放題のお店に入ったら、支払った額はもうサンクコスト、元を取ろうと食べすぎない
機会費用
1時間の仕事価値が高い人は、安いが時間かかる電車よりも、高いが速く着くタクシー移動で時間節約した方が合理的
お金以外のコストも考える。年収1,000万円から800万円に転職しても、満足度が200万円以上あるなら機会費用的には転職は成功(問題はお金以外のコストの金額換算は難しい=機会費用を正確に算出するのは難しい)
経済効果の試算はプラス面の単純集計であることが多い。機会費用の考えは入ってないので、マイナス面の想像もしてみる
他人の機会費用も考える。非同期で繋がることのよさは、他人の機会費用への配慮でもある
比較優位
- 誰でも必ずなんらかの比較優位を持つ
- 同じ場所にずっといると自分では気づきにくそう
- ジョーダンの比較優位がバスケットにあったことは、野球の世界に行ってみないと見えなかったのかも
- 比較優位は場所(周りとの関係性、周りの変化)や時間で変化する
インセンティブ
- デポジット制度 広報や監視に莫大なコストをかけるよりも、低コストで強い効果を生む
- 知的財産権 将来の利益を保護することを約束することで強いインセンティブを与えて努力してもらうためのインセンティブ
- インセンティブの歪み 低所得者でもアパート借りれるようにと政府が家賃値上げを規制したところ、大家さんには建物の価値を高めて住みやすいアパートにしようというインセンティブが働かなくなり、低所得者層が住むアパートの環境は悪化、住環境は以前よりも悪化
モラルハザード
倫理観の欠如というよりは、何らかの契約をした後で、依頼人が観察できないところで、依頼された側(代理人)がとる行動が依頼人に不利益をもたらす構造上の問題
- 自動車保険とドライバーの運転態度
- ドライバー側が、事故を起こしても保険でなんとかなるからと安全運転を心がけなくなる恐れ。
- 保険会社側が、お客にわからないところで過小査定する恐れ
- 偽装問題
- ブランドをありがたすぎて、品質を見抜く仕組みを持たない、見抜く研鑽を積んでこなかった結果である。
- 偽装した側だけに原因があるわけでもない
逆選択
高品質と低品質が混在した市場が放置されてると、高品質は市場から消え、低品質ばかりになる。
品質が隠れた情報になってしまっているため、購入予定者は安きに流れる、高品質(≒高価格)は売れなくなる。投資詐欺、出会い系サイトなど。
逆選択を防ぐにはシグナリング。重要な情報を握っている、情報面で優位な側の方が、(品質についての)隠れた情報を発信する。学歴シグナル、人気店の行列、建物の立派さ、購入後保証など。
スクリーニング(←→シグナリング)。情報を握っていない側が、なんらかの努力をして相手から情報を引き出そうとすること。
価格差別
高くても買いそうな人には高く売り、安くないと買わない相手には安く売る。どの群に属するかを見分ける必要がある(スクリーニング)。
- 価格弾力性が小さい群
- 所得水準が高めで時間に余裕がないから、少々価格が高くても買ってくれる。
- 値上げしても需要量はさほど減らなさそう
- 価格弾力性が大きい群
- 所得水準が低めで時間に余裕がある、節約志向が強い、ちょっとの値上げにも反応しやすい。
- 少し値下げすると大幅に需要量を増やしてくれそう
- 自己選択型の価格差別
- ちっぽけで保管が面倒なクーポン券。
- 複雑な料金プラン、発売からの経過年月で価格が変動する。
- 期間限定のバーゲンセール。
- 重要なことは小さめに、わかりやすいことは大きく書いた広告。
裁定
- 同じ時点に異なる市場で価格差があるときに安く買って高く売る取引
- 投機は異なる時点の価格差を利用する取引
- 裁定が働くと一物一価に
- 市場を統合する
- 似たような機能・性質をもち、代替性が高い商品やサービスの間でも働く
- 石油価格とトウモロコシ(バイオエタノール)価格の連動性
- 新幹線と飛行機
- 取引コストが裁定を阻む
- 取引コストがあるから電気街ができる
- ITの進化は取引コストを下げた→裁定が働きやすくなった
- 幕末日本では金と銀の交換比率が1:5 海外は1:15
- 鎖国解禁により外国商人が日本に銀を持ち込んで金に交換、国内の金が大量に海外流出(裁定が起きた)
- 国内は銀余り。通貨としての銀の価値が暴落。インフレ発生
囚人のジレンマ
正直者はバカを見る。繰り返しの囚人のジレンマ
- 他店よりも安くします宣言=しっぺ返しの宣言
- 値下げには値下げで対抗するけど自分からは値下げしない
- 相手の値下げ牽制、協調を引き出す(暗黙の共謀)
- しっぺ返し戦略で最初は協調を選ぶ
- 2回目以降は前回相手が選択したのと同じ選択をする
- 拘束力、協定がないと、約束しても結局裏切り合う
- 当事者が多いと協定が結びにくく、囚人のジレンマから抜け出しにくい
- 適度な緊張感を持った長期の付き合いが問題を解決する
共有地の悲劇
フリーライダーが発生する。全体の調整役がいない場合どうするか
割引全体価値
- 金利が年10%の場合、現時点では909万円預ければ1年で91万円金利がつくので、1年後に1,000万円になる
- 1年後の1,000万円の割引現在価値は909万円である
将来の金額と現在の金額を比較する場合、将来の金額から金利分を割り引いて、現時点での評価に揃える必要がある
ネットワーク外部性
利用者が増えるとネットワークの利便性が高まる
ネットワーク外部性が強いネットワークは、
- 急激に拡大するか(人気者はますます人気者に)、
- 拡大できずに衰退する(カラーファックスの低迷)かの両極端な結果になりやすい
グラハム・ベル
- 音声学を研究、モールス信号に音をのせる電話機の開発
- 当初はおもちゃだと思われて広がらなかった、電話機をリースで貸すことで加入者を増やす、通信網が広がる、便利さが増す、加入者がさらに増加する、全米を覆う通信網のできあがり
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出社が楽しい経済学2
吉本 佳生
ロックイン
- いろいろな選択ができるはずなのに、入る店などが固定してしまうこと
- いつも同じブランドの商品ばかり買う
- いつも同じ相手を指名してサービスを受ける
偶然選んだお店にロックインしてしまう=他の選択に変更しようとすると、スイッチングコスト(乗り換え費用)が余計にかかる
経済現象を考えるときには、お金の支出の形でのコストだけでなく、努力や時間といったコストも重要
ロックイン戦略=顧客の囲い込み作戦
- クーポン券、試食品、試供品、新装開店記念の半額券、ポイントカード
- 貯めたポイントが無駄になる=スイッチングコストを高める、ロックインを生じやすくする
- これをサンクコスト的に捉えられるかどうか
コンセントの規格のように、社会的な制度や国民全体のライフスタイルなどで一度ロックインが起きると、それを変革するのは極めて困難
- ミクロ経済学 個々の企業や消費者に注目して分析する
- ゲーム理論 企業や個人、国家などが繰り広げる様々な駆け引きを分析する
- ふだんおこなってる買い物は、売り手(企業)と買い手(お客)の間の駆け引きの場。
- 知らないうちに企業との頭脳ゲームに参加させられている。
- 企業はライバル企業よりは与しやすい消費者との間で駆け引きをしがち。
- 賢い生活者(消費者)になるには、買い物の背後に様々な駆け引きが潜んでいると認識すること
コミットメント
- 意図的に選択肢を限定する
- 約束を信じてもらえないと意味がない
- 日頃のおこないで一定の規律を守っている(ように見える)ことが駆け引きの有利さにつながる
- 有利さを手に入れる手段の一つがコミットメント
ホールドアップ問題
- 自らにとって不利な選択を余儀なくされたりする問題
- コミットメントで自分を縛ったために陥る
- ロックインしすぎても生じる
- 最初の時点で長期の契約を結ぶなどして回避可能
- 特殊すぎるやり方、社内限定スキルなどもホールドアップにつながりやすい
ヴェブレン効果
- ヴェブレン効果
- 見せびらかすための消費(見栄のための消費)、顕示的消費の場合、価格が高いほど満足度も高くなる現象。
- ワインなど。高級感があった方がいい
- スノッブ効果
- 他人があまり持ってないものを持つことが満足感を高める。同じものに対する他人の消費量が少ないほど、自分の満足度が上がる
- アンティークなど。希少感があった方がいい
- バンドワゴン効果
- 同じものに対する他人の消費量が多いほど、自分の満足度が上がる
- 平成のルーズソックスなど。流行・ブームには乗っかりたくなる
プレミアム商品
- 発売当初は物珍しくてスノッブ効果が生まれる
- 価格が高いことからヴェブレン効果も生まれる
- 購入者が増えるとスノッブ効果は薄まる
- 今度は人気だから欲しくなるバンドワゴン効果が生まれる
現代は、他の消費者との間で、高級感を競い、希少性を競い、流行への敏感さを競いながら様々な消費活動をおこなっている(消費の外部性: モノやサービスに対する他人の消費量が、自分の満足感に影響する)
- 議題設定効果 人々の注目を一つの話題に集めてしまう効果。他の話題が良くも悪くも目立たなくなる。
- アナウンスメント効果 選挙期間中の優劣報道など。言われた方と逆に行動する、すると予測が外れる。
基本的な経済学
- 個人も企業も極めて合理的に行動するはず
- 個人は最大限の満足を追求し、企業は最大限の利益を追求する、その行動にムダがないはず
- 価格は消費者の満足に直接影響を与えたりしない、と想定している。
需要曲線では価格が上がれば消費量は減る(はず)。ところがヴェブレン効果が生じるとそうならない
心の会計
同じお金でも、人は心の中で色をつけてしまいがち
ハウスマネー効果
- ギャンブルで得たお金は、汗水垂らして稼いだ給料とは違って浪費しがち
- 同じお金であることに違いはないし、色をつけるのは非合理なのに
単なる2,000円引きよりも、一旦支払った後に2,000円キャッシュバックされると得をしたように感じる。ハウスマネー効果につながりがち
行動経済学
ときにムダなことをして満足や利益を減らしてしまう、この非合理性に心理学などの視点から光を当て、非合理的な行動に規則性を見つけ、非合理の根拠を論理的に説明する
- プロスペクト理論
- 損することを恐れがち。損失回避性
- 現状維持バイアス
- 保有効果 いったん保有したものには、その価値を高めに評価してしまい、手放して損することを嫌がる
- アンカリング効果 無関係な数字でも、最初に印象に残った数字が後の判断に影響を及ぼす(割引セールの割引額に心動かされる)
- 他人の判断に、自分の判断が影響される。
- 自分の中だけでもある(無関係な数字が影響したりとか)
- 確実性効果 ゼロや100%といった極端な数値に、過大な評価を寄せる心理。元本保証を極端にありがたがる
- ピーク・エンドの法則 一連の体験から得られる満足感は、ピーク時と終了時の満足感だけでほぼ決まる(ピーク時や終わりの印象で、全体の印象を決めてしまう)
- 決定麻痺 選択肢が多すぎると決めかねてしまう(シーナ・アイエンガー)
スクリーニング
相手の情報が十分にない(情報の非対称性が生じている)とき、こちらから何らかの仕掛けを用意し、それに対する相手の反応を利用して、相手から情報を引き出す。ふるいにかける、一見さんお断り。
- 好きな相手に少し無理なお願いをして気持ちを確かめる
- 従業員割引、エントリーシート
- 年功序列型の賃金体系:離職しにくい人を集めやすい
- 業績給・成果主義型の賃金体系:能力に自信がある人を集めやすい
- ちっぽけなクーポン券(自己選択型の価格差別)
勝者の呪い
オークションの勝者になったが故に味わう後悔。勝って手に入れたモノの価値が、自分が支払った金額(落札価格)よりも低いと気がついて後悔する現象
ウィリアム・ヴィックリー
- セカンドプライスオークションを考案
- 勝者になった買い手が後悔しなくて済むようにすることで、買い手が正直に行動するように仕向ける、という情報を引き出す工夫
- 自動入札機能も同様
- 公開オークション イングリッシュオークション。安い価格から始めて、どんどん価格を上げていく
- ダッチオークション 高い価格から始めて、どんどん価格を下げていく。入札=落札なのでイングリッシュオークションよりもサクサク終わる
- 封印オークション 公共工事の入札など。参加者が他の入札者の価格を知らない状態で一度だけ希望価格を入札。
レントシーキング
- レント みんなが求めても供給量が増えない何かが生み出す報酬や、供給量が一定の、何かにつけられた価格
- レントシーキング なのにレントを求める奪い合いや、既得権益なレントを維持しようとする活動
- 禁酒法がレントを生み、ギャング発生・抗争になり、独占を生む
- 禁酒法を廃止したらレントが消えた
レントシーキングを防ぐには
- 規制をやめてレントをなくす
- 権限放棄する(レントシーキングがムダだと知らしめる、給与決定権が直属上司にない、ルールですのでの一点張りなど)
- レントを意識させない(社員の給与を明らかにしない、全員一律にする)
- 昇進を一律年齢で決める、レントシーキング防げる、有能でなくとも昇進する
- 上司が無能と嘆く羽目になるのは、レントシーキング防止制度の副作用かも?
規模の経済性
生産規模が大きくなるほど、製品1個あたりの生産費用(平均費用)が安くなる
範囲の経済性 異なる複数のビジネスを組み合わせることでコスト(平均費用)が安くなる
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